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[ 2024/04/19 12:50 | ]
不在であるがゆえに
先日、「恋愛学」なる
学問の講演を聞いた。

そこで、たいへん興味深い
場面に出会った。

講演者の大学教授が
観客の女性に
こういう質問を投げかけた。

いくらで旦那さんと
別れていただけますか?

その女性、結婚三年目で、
夫婦仲はたいへん良好なようだ。
100万、200万と金額を提示する教授。
首を横に振る女性。

男の価値は、
金で決まると教授は
言いたいそうだ。

1000万、2000万、
どんどん値を吊り上げていく。
なかなかイエスと言わない女性。

値が上がるにつれ、
女性のテンションが妙に高くなっていく。

もし、実際に目の前に
大金を積まれたら、
どうなるんだろうかと
想像力が刺激されているようだ。

とうとう億を超える。
「一般サラリーマンの生涯賃金の
平均は三億ですよ!」と叫ぶ教授。

女性の迷いが激しくなっているのが、
手にとるように分かる。
しかし、困惑というよりは、
嬉しくなっちゃってる感じだ。

額が低い時は、
とんでもないという態度だったのが、
億を過ぎたあたりから、

どうしましょう!
どうしましょう!

と戸惑いつつ、喜んでいる。

10億!…いえ
20億!……いえ
30億!………いえ

100億!!!……… 

はいっ!

実際に100億、
手にしたわけでもないのに会場は、
妙な熱気に包まれていた。

非常に楽しい光景である。

が、
これが
実際に札束を
積まれたとしたら、
どうだろう?

これほど
楽しい雰囲気に
なっただろうか。

いや、
これは不在の札束による
仮想ゲームであるからこその
展開なのではないか。

実際なら、
いくらぐらいで
ケリがついただろうか?

いや、
そもそも、現実的には
あり得ないシチュエーションなのだ。

だから、
金額を吊り上げる方も
気楽なもんだし、
不在の金を積まれる方も
パートナーと金を、
無邪気に天秤にかけられる。

実際であれば、
もっと他の多くの
要素が絡まあって、
悩みも複そうとう雑になるだろう。

己の良心や道徳。
世間の目。

そして、欲望。

何らかの選択をしたとしても、
果たしてそれで良かったのか?
という後悔が一生つきまとう。

それが、現実だ。

人は実在だけでは
生きてゆけない。

不在あるいは幻想が
あるおかげで
私たちは
なんとか幸福感を
感じつつやって
いけてるのでは
ないか。
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[ 2012/12/10 21:16 | Comments(0) | 雑想 ]
表現について
先日、友人があるテレビドラマの出来の
あまりのひどさを嘆いていた。

そんなにひどけりゃ観なきゃいいのに
とも思いもしたが、

ある作品が、どうしてそんなに
ひどいのかということを考える
ことは、結構、面白い遊戯でもある。

友人の話をきよくよく聞いてみるに
どうやらそのドラマの作り手たちは
表現と説明を混同しているようだ。

表現は物事の説明でも、
なんらかの思想や価値観の伝達でもない。

創作術の初歩中の初歩である。

困ったことに、自称表現者の
多くがこのことをよくわかっていない。

だいたい、全ての人間は、
世界のすべてをを完全に
認識できやしない。

つまり、我々はほとんど
何もわかっちゃいない。

世界のごくごく一部を、なんとなく
ぼんやりと認識しているのみである。

他者はもちろん自己のことを
よくわかっていない。
というか理解する能力を
はなから持ち合わせて
いないのである。

話し合えば理解できる。
よく聞き、よく見れば理解できるように
なる。

というのは、人間のエゴが
生み出した幻想だ。

だから、コミュニュケーションが
うまく行かないのは
人間として当然であって、
そんなに悩むようなことでも
ないような問題なのだ。

こう言ってしまうと
なんだか悲観的なことを
言っているようだが、
こう考えてみてはどうだろう。

人間は
説明も理解も
常に不完全にしかできないが、

表現することだけは可能である、と。

なぜなら、表現には
完全、不完全という価値基準が
あてはまらないからである。

芸術の場以外、
日常生活でもこういうスタンスで
生きていけば、それなりに
面白くやっていけそうな気がする。

だけども、
教育の場や職場などでも
表現力の向上が叫ばれて
いるようだが、

どうも、なかなか表現と説明の
違いが認識されていないようだし、

先のテレビドラマの問題にも
あるように

本来ならば、
表現のスペシャリストとして
一般生活者をひっぱっていかなきゃ
いけないはずの芸術家の多くが
そのことに無自覚という

はなはだ困った状況なのだ。

[ 2012/12/09 23:08 | Comments(0) | 雑想 ]



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